研究概要 |
有機物質の電解還元はファイン指向の合成法として意慾的に応用され始めたが, その工業化を阻むものに分解対極として酸素発生を行う電極の異常消耗がある. これは分解還元の原料有機物質を溶かすための有機溶媒がアノード室へ侵入するために起ることを明らかにした. アセトニトリルで代表される有機溶媒がアノード液の硫酸にまざると代表的な白金電極の電解消耗は200倍も異常加速される. 有機物質の溶存による異常消耗を受けない高性能電極材料の開発はその原因を究明して方針がきまるので先ずこれから出発した. 白金をはじめとする白金族系アノードでの酸素発生において溶液中に有機溶媒が混入すると電解電位が異常に上昇することを明らかにし,現象論的にはこれが電極消耗加速の原因となる. この電位上昇の大きい溶媒は電極消耗の加速も大きく,最も一般的な溶媒であるアセトニトリルが最も大きい. アセトニトリルは電解中CNを溶液に生成し,このCNを電極消耗を加速するものである. しかし溶液中に生成したCN濃度を等しくしてくらべると無機のCNの混入以上にアセトニトリルによる消耗加速は大きい. 本研究の目標である有機物の混入によっても異常消耗のない高性能電極開発のための材料選定は,アセトニトリルやCNが溶存しても酸素発生の電解電位が上昇しないものを求めて行われる. 白金族のPt,IrO_2,Rh_2O_3などはすべて電位の上昇があり異常な消耗を受けるのに, 二酸化鉛や酸化鉄(フェライト)は有機物による電位上昇はなく,異常な消耗を受けないことを明らかにした. 次年度は,この指導原理に従って使い勝手のよい白金族被覆チタン電極の形で,有機物による異常消耗を受けることの少い高性能電極を開発する. そのための基礎が固められた.
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