研究概要 |
本年度行った研究は以下のように3通りに大別できるが,その実施大要と実績を併せて記載することにする. 1.本研究では主として熱処理法及びプラズマ重合法によって,アモルファス有機半導体の作製を行った. 熱処理法においては,予め調製した高分子化合物(フェノールホルムアルデヒド樹脂及びこれにチッ素やホウ素を意図的に含ませたもの)の非酸化雰囲気中で加熱処理することにより,安定な半導体を得ることができている. 一方,プラズマ重合法では電気式ルツボによる原料の加熱昇華方式を新規に開発し,原料物質の気化蒸気をプラズマ部分に直接導入し,蒸着を行うことに成功した. これによって融点の高い大縮合芳香環系化分物を原料とするプラズマ蒸着膜の作製が可能になり,現在かなり高導電性の有機半導体薄膜を得ることができている. 2.アモルファス有機半導体に対する化学的ドーピング方法の確立を目ざし,典型的な当該構造を有する瀝青炭に対して5フッ化ヒ素,ヨウ素,臭素等のルイス酸のドーピングを実施した結果,6桁以上の導電性の増加を見た. したがって,アモルファス有機半導体に対してもドーピング過程は有効であることがほぼ判明した. 3.熱処理法で調製したフェノールホルムアルデヒド系のアモルファス有機半導体及びそのドーピングによる誘導体に対して,誘電性・熱起電力の測定を実施し,さらに応用展開として,2次電池の電極として,該半導体材料を使用する研究を行い,電池特性として有効であることを見出した. 以上の他にも,アンダーソン局在に対する量子化学的解析を行い,不純物の存在する場合の電子状態に対する有用な知見を得ることができた.
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