研究概要 |
本年度においては,チトクロームPー450モデル反応系の確立とその適用性ならびに反応機構につき研究し, ポルフィリン鉄錯体による究育酸素化反応の設計に供する基礎的基見を得ることを目的とした. 種々検討の結果, 反応系としては, 鉄(III)テトラフェニルポルフィン,鉄(III)→鉄(III)への還元剤としてNaBH_4あるいはKBH_4,Feへの第5配位子としてチオフェノール,溶媒としてベンゼンーエタノール(1:1)を用いることにした. 反応基質にスチレンを用いた酸素化反応においては, 1ーフェニルエタノールとベンジルアルコールが生成したが, この反応を低温(5℃)で, 還元剤としてKBH_4(18ークラウンー6使用)を使用して行うと, アセトフェノンおよびベンズアルデヒドが中間に生成することが明らかとなった. すなわち1ーフェニルエタノールおよびベンジルアルコールは, アセトフェノンおよびベンズアルデヒドがBH_4^-還元されて生ずるものと推定される. 鉄(III)テトラフェニルポルフィンはBH_4^-により一電子還元を受けて, Fe(II)ポルフィリンとなる. 反応系は酸素により置換されているため, Fe(II) ポルフィリンは容易にFe(III)ポルフィリンへと酸化され, 酸素はスーパーオキシド(O_2^-)へ還元されるはずである. そこで, O_2^-発生剤としてKO_2を用い, 窒素雰囲気下, スチレンの酸化反応を試みたが, 検討した多くの条件下で, O_2^-による酸化でアセトフェノンやベンズアルデヒドが生成するという証拠は得られなかった. それゆえ, Feポリフィソンによるスチレンの酸素化にはO_2^-は関与していないと結論した. またヨードシルベンゼンを酸化剤とした場合には, スチレンオキシドが低収率で生ずるが, 我々の実験条件下ではスチレンオキシドの生成も全く認められなかった. スチレン以外にシクロヘキセン,ビニルシクロヘキサン,ビニルシクロヘキセンの酸素化も試み, 生成物はいずれも第2アルコールであることを明らかにした.
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