研究課題/領域番号 |
62470082
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
有機工業化学
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
橋本 静信 同志社大学, 工学部, 教授 (90066027)
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研究分担者 |
田丸 良直 京都大学, 工学部, 助教授 (80026319)
加納 航治 同志社大学, 工学部, 教授 (60038031)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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キーワード | チトクロームP-450 / アルケン / 酸素化 / 反応機構 / 光学活性アミン / 不斉酸素化 / 血清アルブミン / 水溶性ポルフィリン |
研究概要 |
生体内酸素添加酵素であるチトクロームP-450をモデルとし、精密有機合成として使用できるアルケンの酸素化反応、特に不斉酵素化の実現を目指して研究した。まず反応系を設計する必要がある。P-450モデルとしてはFe(III)テトラフェニルポルフィン(FeTPP)を、NADPHに代わる還元剤としてNaBH_4を、さらに第5配位子としてチオフェノールを用いることにした。種々のアルケンの酸素化を試みた結果、ほとんどの場合、見かけ上Markovnikov則に従う水の付加生成物ぶあるアルコールが得られ、FeTPPは触媒として作用することが明らかとなった。次に反応機構をスチレンを基質として選んで詳細に検討したところ、1)Fe(III)→Fe(II)へのBH_4還元、2)Fe(II)へのO_2の配位、3)配位圏内でのジオキセタンの生成、4)ジオキセタンのBH_4^-還元によるアセトフェノンおよびベンズアルデヒドの生成、5)これらカルボニル化合物のBH_4^-還元によるアルコールの生成、といった経路で反応が道行することを推論した。この反応機構からすると、前述の糸では、当初目的とした不斉酸素化は理論上実現できない。そこで反応基質として2-メチルシクロヘキサノンを用い、このものと光学活性アミンとのSchiff塩基の酸素化反応を、Fe(III)TPP/4-メトキシフェノール/CaH_2糸で試みた。加水分解後得られた2-ヒドロキシ-2-メチルシクロヘキサノンは低収率ながら光学活性(0〜26%e.e.)を示した。しかし最終生成物の収率があまり良くないため、精密有機合成反応とはならないと結論した。これらの基礎的知見から、我々はより生体系に近いP-450モデル系を構築する必要性を感じ、蛋白として入手し易い牛血清アルブミン(BSA)を、またヘム鉄の代りにカチオン性ポルフィリンを用いて、人工チトクロームP-450を合成するための基礎実験を実施した。その結果BSAはカチオン性ポルフィリンと安定な錯体を形成することが明らかとなり、近似度の高いP-450モデルとなり得ることが示唆された。
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