研究概要 |
1.我々は[Cp*RuCl_2]_2(1,Cp*=7^5ーCsMe_5)とPhSHとの反応により, 架橋チオラート3つを有する[Cp*Ru(SPh)_3RuCp*]Cl(2)が得られることを報告したが, チオラート源としてPhCH_2SH,RSSiMe_3(R=Et,iーPr,tーBu)を用いると一連の架橋チオラート2つを有スル二核錯体[Cp*RuCl(SR)_2RuCp*Cl](3)が得られることを見出した. X線構造解析に適する結晶が得られなかったため, 錯体2を標準物質として錯体3のEXAFSを検討した結果, RuーRu単結合を有する上に示した構造が最も適切であることが明らかとなり, また^1HNMRの結果から可能な異性体のうちcis構造のみが存在していると推定した. 錯体3(R=Et,iーPr)の溶液にCOを接触させると, 一方のRuだけにCOが配位した[Cp*RuCl(SR)_2RuCp*(CO)]が得られ, またtーBuNCとの反応では同様に[Cp*RuCl(SEt)_2RuCp*(tーBuNC)が生成した. 一方, 錯体1とNaSRの反応では, R=Et,Phのとき[Cp*_2Ru_2(SR)_3]_nが, またR=iーPr,tーBuのときは[Cp*Ru(SR)]_nと異なる組成比をもつチオラート代合物が得られた. 2.[Mo_3S_4(H_2O).ナ_<9.ニ>]^<4+>(4)は不完全キュバン型構造を有し, その空いた部分にFeやNiなどを取り込むことが知られている. そこで錯体4とPdやRuとの反応を試みたところ, Ruは反量しなかったがPdとは反応が進行し, 混合金属スルフィドクラスターが生成した. 一応[PdMo.ナ_<3.ニ>S.ナ_<4.ニ>]^<4+>のカチオンクラスターと考えているが, より興味深い骨格に変換されている可能性もあり, 現在その詳細を検討しているところである. 3.錯体1とアリールジチオールm,pーC_6H_4(SH)_2とを反応させることにより, [Cp*_2Ru_2]ユニットがジチオラートにより連結された高分子量のRuーS化合物を高収率で得た. これらの生成物粉末をペレットに圧縮成型し, インピーダンスアナライザを用いてその電導度を交流二端子法により測定した結果, 10^<-7>Ω^<-1>cm^<-1>程度の半導体領域に相当する電導性を示すことが判明した. なお, ハロゲンドープの効果は認められない.
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