1ーメシチルー3ーフェニルー1、2ービス(トリメチルシリル)ー1ーシラシクロプロペンとテトラキス(トリエチルホスフィン)ニッケルとの等量反応を行うことによってニッケラシラシクロブテン(1__〜)を大量に合成する手法を確立した。錯体1はケイ素とニッケルを同一四員環内に含む構造を有し、構造化学および合成化学の両分野において重要な化合物である。得られた錯体1__〜の化学的挙動を明らかにする目的で種々の反応試剤との反応を行い1__〜の構造に特徴的な結果を得た。特に熱及び光反応を行うと錯体1__〜はシレンー遷移金属錯体の一種であるシラプロパジエンーニッケル錯体にほぼ定量的に変換することを見い出した。生成したシラプロパジエンーニッケル錯体は速やかにさらなる異性化をおこし、メシチル基のCーH結合のニッケルによる活性化とニッケルの脱離によってベンゾジシラシクロヘキセン誘導体に変化した。このためシラプロパジエンーニッケル錯体の単離には致らなかったが、この異性化反応についてさらに詳しい知見を得るために2ーフェニルエチニルー2ー(0ートリル)ヘキサメチルトリシラン(2__〜)を合成し、2__〜のニッケル触媒反応によってシラプロパジエンを発生させその熱的挙動を検討したところ、この反応は温度依存性が強く220℃では1__〜の異性化と同様にトリル基のCーH結合活性化をおこしたが、260℃ではシリレン錯体経由のトリメチルシリル基のCーH結合活性化が見られた。又、フェニルエチニルポリシランの触媒反応として鉄、ルテニウム触媒下での反応を行ったところ、主生成物としてシリレンー錯体経由の生成物が確認され、さらにこのシリレン錯体中間体をヒドロシランによって捕捉することに成功した。 以上、シラシクロプロペン、フェニルエチニルポリシランと遷移金属錯体との反応によって、メタラシラシクロブテン、シレン錯体、シリレン錯体の生成に成功し、重要な知見を得た。
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