研究概要 |
本研究は蛍光法を用いて高分子鎖の分子運動及び配向下での高分子鎖の分子運動を研究することを目的とする.本年度は,分子鎖運動を測定する蛍光性プローブのキャラクタリゼーション,高分子稀溶液における高分子鎖の局所運動の測定,濃厚溶液における高分子鎖の局所運動の測定を主に行ない次の成果を得た. 1.蛍光偏光解消法による蛍光性プローブ,ペリレンの異方性回転の解析:ペリレン溶液の蛍光異方性比をナノ秒時間分割単一光子計数法により測定し得られたデータの解析からペリレン分子の回転拡散挙動を調べた. その結果ペリレン分子は非対称回転体が部分的滑りの境界条件のもとで回転運動しているとみなせることが明らかとなった. 2.蛍光備光解消法によるポリメタクリル酸メチル(PMMA)稀薄溶液における分子鎖運動の研究:PMMA鎖の中央部に蛍光性プローブ,アントラセンを結合し,その稀薄溶液における蛍光異方性比をナノ秒時間領域で測定し, PMMA鎖の分子運動を調べた. その結果,高粘度,低温媒体中では高分子鎖の配座変化は離散的モデルでよく表わされることが明らかとなった. また分子鎖の堅さを評価した結果,PMMA鎖はポリスチレン鎖に比べて堅いことが分った. 3.蛍光偏光解消法によるPMMA濃厚溶液における分子鎖運動の研究:PMMAの濃厚溶液(<50%)における局所運動を蛍光偏光解消法により測定した. 局所運動の緩和時間の濃度依存性は自由体積理論でよく説明できた. 局所運動モードは高分子の濃度には依存せずほぼ一定であること,高濃度では非拡散的(離散的)な高分子鎖の配座変化が起っていることが示された.
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