研究概要 |
1)ステアリン酸バリウム単分子膜の凝集構造に及ぼす累積圧の影響を透過電子顕微鏡(TEM)による明視野像及び電子線回折像の観察に基づき検討した. OmNm^<-1>においてすでに島状の微結晶構造が観察され, 25mN・m^<-1>で見掛け上均一で広い単分子膜となり, また40mN・m^<-1>では単分子膜が崩壊して重畳しているのが観察された. どの累積圧においても電子線回折像はシャープなスポットを示し, 面間隔は等しく同一の結晶状態を示す. πーA曲線における気一液界面の凝集状態は, 展開後すぐに形成された二次元微結晶が圧縮に伴い凝集し見かけ上均一膜となると結論できる. 2)LB膜の膜法線方向の乱れをX線回折法による評価し, 凝集力・製膜条件の違かが膜構造に及ぼす影響を検討した. パラクリスタル理論の基づき, 得られた回折ピークの積分幅βから積層構造の大きさLと累積層間の乱れ因子gを算出した. 積層構造の大きとLは, ほぼLB膜の累積層21層の大きさに対応し, また層間の乱れ因子gはアルキル鎖長の増加に伴い, 減少した. これは, アルキル鎖長の増加による凝集力の増加が, 積層方向の規反性に反映することを示すものである. 3)LB膜結晶相の連続性と規則性をX線回折法による評価する手法を確立し, 分子間凝集力の違いが結晶相に及ぼす影響を検討した. 膜面の法線方向よりX線を入射してθーθスキャンによる回折強度測定を行い, フーリエ解析に基づくsingle line法より結晶相の連続性と規則性を評価した. アルキル鎖長の増加に伴い電子間凝集力が増加し, LB膜が単一結晶から成る構造に近づくと結論される.
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