研究概要 |
本研究の目的は(1)構造明確なポリ(βーケトン)を合成すること,(2)そのための分子設計を行い,新しい重合反応を開拓すること,および(3)ポリ(βーケトン)を新しい高分子材料として応用すること,にある. 初年度は,上記(1)および(2)に関し,以下に述べる3つの方法を中心に研究を展開した. 1.アルキルチオアセチレンをMoCl_5ーSnPh_4の存在下重合させて得られるポリマーをベンゾニトリルー水中,過塩素酸で処理すると加水分解を起こし,部分的にケトン基を持つポリマーが得られることを明らかにした. 2.アルコキシアセチレンをVI族遷移金属触媒を用い重合させ,生成ポリ(アルコキシアセチレン)の加水分解によるポリ(βーケトン)の合成を試みた. イソプロポキシアセチレン,あるいはtーブトキシアセチレンをWCl_6あるいはWCln(OMe)_<6ーn>の存在下,塩化メチレン中,0℃で重合させると,分子量1300〜3000のポリ(アルコキシアセチレン)が生成することを見出した. これはVI族遷移金属触媒を用いるアルコキシアセチレンの初めての重合例である. さらに生成ポリマーをCF_3SO_3H(トリフルオロメタンスルホン酸)ー水で処理すると,目的とするポリ(βーケトン)へ変換できることも分った. 現在,重合収率の向上を目指すとともに,生成ポリ(βーケトン)のキャラクタリゼーションを行っている. 3.新しい含イオウモノマーとしてケテンジチオアセタールおよびそのSーオキシドを合成し,それらモノマーの重合性について詳細に検討した. 前者のモノマーはラジカル,カチオン,アニオンいずれの開始剤を用いても重合するのに対し,後者のモノマーはリジカル開始剤でのみ重合することが分った. 今後,生成ポリマーを酸性加水分解し,ポリ(βーケトン)へ変換する予定である. なお,本研究において得られたポリマーの分子量測定,電気電導度測定,ならびにモノマー純度の検証のため,コロナ分子量測定装置,LCZメータガスクロマトグラアフを購入した.
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