研究概要 |
種々のサーモトロピック液相芳香族ポリエステルおよび低分子液晶エステル化合物を合成し,その固体状態における分子鎖のコンホーメーションをCP/MAS固体^<13>CNMRにより解析した. ビス(pーオキシフェニル)テレフタレートをメソゲン(剛直部)とし,ヘキサメチレン鎖をスペーサー(柔軟部)とするサーモトロピックポリエステルの固体構造は熱履歴に大きく依存することを明らかにした. 特にスペーサー部のコンホーメーションは熱処理により大きく変化した. このスペーサー部のコンホーメションは分子鎖配列に密接に関係していると考えられる. このポリエステルのジカルボン酸成分をテレフタル酸から2,6ーナフタレンジカルボン酸に変えたポリエステルを合成した.このナフタレン環を導入した場合,融点は変化しなかったが,液晶状態が大幅に安定化し液晶一等方性液体相転移点は上昇した. これらのボリマーのスペーサーのコンホーメーションは同じであることが固体MNRより明らかとなった. ナフタレン環の導入により加工性の良さを保持したまま配向性の良い材料が得られると考えられる. 種々の置換基を有するハイドロキノンおよび4,4′ージカルボキシー1,6ージフェノキシヘキサンより溶液および溶融重縮合で合成し,液晶性,固体構造を調べた. 溶融重縮合により合成したものについてはミニマックス引張試験機で引張強度を調べた. メチルハイドロキノンをジオール成分とするポリマーではヘキサメチレンという比較的長いスペーサーを有するにもかかわらず,引張強度1060Kg/cm^2と,リファレンスとして用いたセラニーズ社の全芳香族ポリエステルLCP2000の半分以上の値を示した. この結果は全芳香族ポリエステルでなくとも,化学構造,固体構造をうまく制御し分子鎖を配向させれば,長いスペーサーを有する液晶ポリエステルでも加工性の良い高強度材料となる可能性を示していると考えられる.
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