ポリペプチド類は生理活性物質など広い用途があり、機能材料としても注目を浴びている。その機能は大きくアミノ酸配列に依存するが、定序的重合法としては生体触媒を用いる方法が優れている。一般に酵素などの特異的な触媒活性を利用して有用物質を生産する試みは、特定の目的のための自然の仕組みをそのまま用いるため、全く新しい物質を得ようとする場合には無力である。ペプチド合成では、タンパク質加水分解酵素の逆反応を用いるものと、DNAーmRNAをテンプレートとしてタンパク合成系を利用する方法の二つが考えられるが、前者では一つの酵素で対応できる結合に限りがあり、後者では遺伝情報を読みかえた配列や非天然のアミノ酸を含むポリペプチドを得ることはできない。 そこで本研究では酵素の機能を(生)化学的に変換させることにより、天然にはない触媒性を持った酵素系を創出し、さらに通常とは異なる極端な条件(高圧力、高塩濃度、高有機溶媒含量など)において働かせることにより新奇な構造を有するペプチドを合成しその機能を検討することを目的とした63年度は、 1)逆反応触媒の対象とする酵素として、サーモライシン、カルボキシペプチダーゼY、Wを取り上げ、 2)それらの酵素の高圧力、高pH、高有機溶媒含量、高塩濃度などによる酵素の特異性の変化を調べ、これらのパラメターをぺプチド合成反応の制御因子とすることによって、より広範に機能を制御する可能性について検討した。
|