昭和63年度は、オリゴジメチルシロキサン系のポリマーにつき、気体透過性を支配する因子を明らかにすること、また、気体透過チャンネルに組み込む錯体の合成と、そのポリマーへの組み込みに中心をおいて検討した。まず、種々の構造のオリゴジメチルシロキサンをpー置換基とするポリスチレンにつき、ポリマーの熱的性質に及ぼす側鎖の影響について検討した。シロキサン結合は、主鎖ポリマーのガラス転移温度を非常に有効に下げ、固体状態での高分子膜での気体の透過領域である、高分子鎖間の間隙の制御に重要な役割を果すことがわかった。固体での高分解能核磁気共鳴による緩和現象の測定により、嵩高い置換基を持つポリマーにおいて、シロキサンスペーサーを導入すると、側鎖は溶液中に匹敵するぐらい自由に運動することを定量的に解明できた。また、ガラス転移温度、スピンースピン緩和時間、拡散系数を対応させることにより、側鎖の運動性が気体の透過性を支配することを明らかにした。さらに、このような指針に基づき、ノルボルネンを主鎖とし、オリゴジメチルシロキサンを側鎖とするポリマーがより良い透過膜素材となることを明らかにした。 次の目標は、気体透過選択性の制御である。2つの試みをした。1つは、ポリマーの構造制御による、気体透過の際のfree-volumeの精密な制御である。いま1つは、気体透過チャンネルへの、選択性を与える官能基の導入である。Coーサルコミン錯体を合成し、ポリマーへの導入を検討した。ブロモメチル基を利用して錯体を導入できる見通しを得た。今後、相分離した透過チャンネルへの導入法、その働きについて一層の検討をする予定である。なお、ポリマーの熱分析や、側鎖の固体状態での構造や、液晶構造の検討には、サーモシステムや偏光顕微鏡が有効な手段であり、これを購入して作業の効率化を行った。
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