研究概要 |
NAD(P)^+を補酵素とする酸化還元反応を工業的に利用する場合、有用な主反応系、補酵素再生系および補酵素のリアクタ-内保持系の三点を開発する必要がある。本研究では、主反応系として主にキシロ-スのキシリト-ルへの変換系を選び、メタン生成菌によるNAD(P)H再生系を構築し、新規な荷電膜バイオリアクタ-による補酵素保持を試みた。すなわち、固定化酵母のxylose reductaseと固定化メタン生成菌のhydrogenaseおよびF_<420>-NADP^+ oxidoreductaseの共役系を用いてH_2によるキシロ-スのキシリト-ルへの変換、さらに荷電膜による補酵素の保持を試みた。以下に研究実績を概述する。 1.荷電膜(スルホン化ポリエ-テルスルホン複合膜)の保持率を緩衝液中で検討した結果、本反応に必要な酵素(粗酵素)および補酵素(NADP(H),F_<420>)の保持率は各々90%以上を示し、また生成物(キシリト-ル)は全く保持されず良好な結果を得た。本反応系に適用した場合、4時間反応で濾液からキシリト-ルが回収でき(93%収率)、NADP(H),F_<420>は90%以上リアクタ-内に保持された。 2.酵母(Candida pelliculosa)とメタン生成菌(Methanobacterium sp.HU)を先ず光架橋性樹脂(ENT4000)に同時包括固定後、ベンゼン処理、グルタルアルデヒド・ヘキサメチレンジアミン架橋処理した固定化菌体を用いて、H_2によるキシロ-スのキシリト-ルへの連続生産を試みた結果、約2週間安定であることを見い出した。また、メタノ-ル資化性メタン生成菌、Methanosarcina barkeriはF_<420>依存hydrogenaseと共役したNAD(P)-F_<420> oxidoreductaseを有しており、NADおよびNADPの両者を還元でき、メタン生成菌のhydrogenase系を利用したH_2によるNAD(P)の還元系の汎用性も明らかにした。
|