蚕品種の交雑によって産生された繊度の異なる絹糸(極細繊度系:繭糸繊度1.74d、極太繊度系:繭糸繊度4.24d)および対照区在束品種絹糸(繭糸繊度3.62d)の3種類の染色性を比較検討した。 1.染浴のpHと酸性染料の染着量との関係から、均染性染料と不均染性染料とでは蚕品種間に若干の相違が認められたが、いずれの染料に対しても細繊度絹糸が太繊度絹糸よりも高い染着量となることが認められた。不均染性染料に対してはpH3.8〜6.1の間の染着量は、極細繊度絹糸>極太繊度絹糸>対照区絹糸の順となった。均染性染料に対してはpH4以下の酸性染浴では、極細繊度絹糸は他繊度絹糸よりも1.4〜1.6倍高い染着量を示したが、pH4.7〜6.1の間ではわずかに高い染着量を示したにすぎなかった。 2.繊度の異なる絹糸を交撚または交織して新素材としての活用を想定し、これら異なる繊度の絹糸を同一染浴中で染色し、その染着量および色差を調べた。その結果、比較的繊度差が小さい極太繊度絹糸と対照区絹糸の間には染着量および色差に大きな相違は認められなかった。不均染性酸性染料および反応染料による染色では、極細繊度絹糸に対する染着量が他絹糸よりもかなり高く、色差も大きくなることが認められた。 3.このように極細繊度絹糸に対する染着量が高くなる理由について、染着速度から調べた結果、いずれの染料に対しても極細繊度絹糸は大きな染着速度を示すことが認められた。これは細繊度のものは単位重量当りの表面積が太繊度のものよりも大きく、それだけ染浴中の染料分子と接触する機会が大きくなるためと解釈した。また、同一染浴中からの染色で、均染性酸性染料による染着量で3種類の絹糸間に大きな差が生じなかったことは、染料のマイグレーションが大きいことによる。
|