62年度に開発したゴム電極を用い、直流電流25Vを通電したときに起る土壌中の変化を室内実験で追跡するとともに、ビニルハウス内に設置した実用化モデル実験では、実際にアブラナ化植物を栽植し、アブラナ根こぶ病菌による罹病発生状況を検討した。 1.室内実験 この実験では電極として、ゴム電極の他に、比較のため銅板電極を用いた。径20cm、長さ50cmの硬質塩化ビニル製円筒内に水分率35%の鉱質土壌を充てんした。土壌の種類は各種水溶性塩を添加して作成した塩類土壌と通常の自然土壌であった。円筒の両側に電極を密着させて通電し経時的に土壌中での物質移動を追跡した結果、塩類土壌では通電後72時間後には陽極側に多量の陰イオンの集積が、陰極側には陽イオンの集積が認められた。この傾向は銅板電極で顕著であったが、同時に腐食も著しく、陰極側電極よりイオン化した銅イオンが逆に土壌中に蓄積した。ゴム電極は2ヵ月の連続通電においても安定であり、実用化に向けて大きく前進した。有機酸、アミノ酸分析も今後検討していく予定である。 2.実用化モデル実験 長さ10m、幅0.5mの面積をコンクリートブロックで包囲し、土層の深さが40cmとなるように腐植質火山灰土(黒ボク土)の未耕土を充てんし、この土槽をさらに4区分し、根こぶ病菌接種・電極区2区と、病菌接種・電極無使用区・病菌無接種・電極無使用区を設置した。実験装置など施工のため、アブラナ科植物の栽植は11月開始となり、1月下旬に収穫した。無加温と日射量のバラツキのために、生育量には、一定の傾向は認められなかったが、根こぶ罹病の固体数は病菌接種・電極無使用区で明らかに高いことがわかった。今後は連作をくり返し、根こぶ病発生の動向を検討するとともに、実験室レベルで病菌に対し検討したい。
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