研究概要 |
本研究により開発した特殊なゴム電極を用いて、本年度は土壌中の種々の有機酸、アミノ酸など有機化合物の直流通電による移行を検討した。土壌は灰褐色低地土壌の風乾細土を最大容水量の60%の水分含量にしたものを用い、この土壌を直径20cm、長さ50cmの円筒形硬質塩化ビニル容器に充填した。カラムの両側にゴム電極を密着させた後、アノ-ドとカソ-ドの間に初期30V,0.1mA/cm^2の直流電流の通電からスタ-トし、一定電流が維持できるように自動的に電圧のみが変動するように調節した。実験系はアノ-ドに接した部分に直径4mmの細孔の隙間を設け、外部とガラス管とを通じて連絡できる開放系と、外部との連結がまったくない密閉系の2系から構成した。通電後約6時間から開放系のガラス細孔を通じて黒色の溶液が流出しはじめた。溶出速度は初期は5ml/hr,後期は1ml/hrとなり時間の経過とともに遅くなった。溶液のpHは初期が10.8であったが、時間の経過とともに低下し、最後の溶液画分5mlについては7.0であった。溶液中の有機酸、アミノ酸を高速液体クロマトグラフで検出したところ、有機酸では初期の溶液中にはギ酸、酢酸、シュウ酸が認められ、このうち、酢酸がもっとも高濃度に存在した(3mM-8mM)。溶出画分の後期になると分子量の高いと思われる多数の未同定の有機酸ピ-クが認められたが、このうち、パルミチン酸およびグルタ-ル酸が同定された。アミノ酸は初期の画分にはアラニン、グリシン、システインが認められたが、いずれもきわめて低濃度であった。後期溶出画分にもいくつかのピ-クが認められたが、同定するまでには至っていない。これらの物質は主として土壌中の微生物の代謝生産物であり、これらの物質を詳細に検討すれば土壌中の微生物の動態を把握できるばかりでなく、従来採取が困難であった土壌液中の有機化合物の採取・分画が本法によりある程度改善されたものと考えられる。
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