研究概要 |
動物の遺伝子発現制御に関与するクロマチン非ヒストンタンパク質の研究を二つの実験系を用いて行った. 一つは,体細胞核内における染色体の異常凝縮と遺伝子発現の不活性化に関与するタンパク質の研究であり,ニワトリのW染色体(雌に特有の性染色体)をモデルとして実験を進めた. このW染色体DNAの約50%を占めるXhoIファミリー反復配列の反復単位としてXhoI分解で得られる約0.7Dbと約1.1Kbの配列がある. これらの配列はクローン化されており,その塩基配列分析の結果,約21bpの基本単位が縦列重復した構造からなること,各基本単位中には3〜5個のAと3〜5個のTのクラスターが比較的G+Cに富む6〜7塩基を隔てて存在すること,両反復単位とも折れ曲がりDNAの特徴を示すことが分った. 一方,雌ニワトリの肝臓の核内にこれらの反復単位と高親和性結合を示す非ヒストンタンパク質が存在することを見出し,Wーproteinと名付けた. Wーproteinを種々のカラムクロマトグラフィーにより高度に精製し,モノマー分子量72KDaのタンパク質で未変性条件下では約30分子からなる巨大なマルチマーを形成すること,2本鎖DNAはこのタクパク質の周りに巻き付き,2重ラセンの浅い溝部分に1ピッチごとに現われるAーTクラスター部分と相互作用を示すことがDNaseIフットプリント法などによって示された. もう一つの実験系はカイコのフィブロインH鎖,L鎖遺伝子の同調的発現制御に関わるタンパク質に関するもので,異なった染色体上に存在する両遺伝子の5′上流域に3ヶ所存在する相同性の高い塩基配列に特異的に結合するタンパク質の検索を進めた. 18,25,30bpのこれらの配列をそれぞれ1個ずつ含むクローンを作成し,ゲルシフト法で調べた結果,後部絹系腺の核の0.35MNaCl抽出画合中に,それぞれの配列と高親和性結合を示す成分の存在が認められた.
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