研究概要 |
研究実施計画に基づき,大腸菌,パン酵母,および動物培養細胞についてそれぞれの材料に適した手法で,膜リン脂質の役割の解明に努めた. 2大腸菌では,主にカルジオリピン(CL)合成系について解析した. CL合成を触媒するCLシンターゼの構造遺伝子clsを,プラスミド上2つの異なる方法で破壊し,染色体との相同組換えでcls完全欠損株を構築した. この株の生育,脂質組成等の解析により,cls遺伝子及びClシンターゼは大腸菌にとって必須ではないが,その保特は有利であること,cls遺伝子完全分損株でも少量のCLが生成されることを明らかにした. CL生成に及ぼすpss遺伝子量の影響ならびにclsおよびpss両欠損の非両立性の観察から,ホスファチジルセソンシンターゼ(PSSase)が副反応としてCLを生成すること,およびCLが大腸菌の生存に必須であることを推定した. 2パン酵母のPSSaseの構造遺伝子CHO1の塩基配列を確定し,遺伝子一次産物は30KDaの蛋白質で,これがプロテアーゼ反応で活性型の23KDaに変換されるこさを明らかにした. この酵素は,基質Lーセリンに対すKm 値がセリン高濃度では大きく,低濃度では近いという興味ある性質を持つことを見出し,含窒素リン脂質合成を一定に保つ上で意義があると給論した. CHO1遺伝子の完全欠損株を構築し,その性質の解析から,PSSaseおよびホスファチジルセリンはパン酵母の存在に必須ではないが特異的な役割を有することなどを明らかにした. 3マウスFM3A細胞から,寒天上の生育にホスファチジルイノシトールの培地への添加を必要とする変異株を多数取得し,それらの生育の特性,細胞の形状,リン脂質添加の影響等を調査した. 代表的な株について,リン脂質への^<32>Piや^3ーイノシトールの取り込,ホスファチジルイノシトール合成酵素活性などを測定した.
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