枯草菌のツニカマイシン耐性変異株のうちで同時にαーアミラーゼの高生産性を付与された変異株の解析から、我々は枯草菌において固有遺伝子の染色体上の遺伝子増巾現象をはじめて見出した。この遺伝子増巾は形質転換によって受容菌にも誘起することが出来、その形質転換DNAの必須構造を明かにしてきた。本研究は更にこれまでの知見を敷衍し、枯草菌染色体上に外来遺伝子を増巾すること、また遺伝子増巾に関与するツニカマイシン耐性遺伝子tmrBの機能の解明を目的とする。 初年度はまず外来遺伝子の枯草菌染色体上への増巾を試みた。我々は既に枯草菌に遺伝子増巾を起しうる形質転換DNAとして6.4kbEcoRI断片をクローン化している。この断片の一端にはamyE遺伝子の一部が存在する。この6.4kbEcoRI断片の中ほどにpC194プラスミド由来のクロラムフェニコールアセケルトランスフェラーゼ遺伝子catを挿入したものを作製し、このDNAを用いてamyE07変異をもつ枯草菌を形質転換し、amyE^+、Tm^r(ツニカマイシン耐性)の形質転換体を得たところ、外来遺伝子であるcatを枯草菌染色体上に約20コピー増巾させることに成功した。cat遺伝子が増巾することによってクロラムフェニコールに高度に耐性(40μy/ml)になっていた。 最終年度では遺伝子増巾を誘起する役割をもつツニカマイシン耐性遺伝子tmrBの機能の解析を行った。tmrB遺伝子は我々により既にクローン化されている。この遺伝子のmRNAのスタートポイントを確めるためSIマツピングを行い、塩基配列から求めた想定ORFの正しが確められた。次にtmrB遺伝子産物が増大したときツニカマイシン耐性となるところから、この状態でツニカマイシンの分解や修飾の有無をしらべたが、これらの現象は認められなかった。tmrB遺伝子が多コピー状態でもツニカマイシン作用点の酵素活性は耐性化していなかった。
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