1.Streptomyces albonigerが生産して当該菌の基中菌糸から気菌糸を誘導する活性物質pamamycin群化合物のうち、分子量607を有するpamamycinー607の単離・構造決定に成功した。Pamamycinー607は16員環マクロジオライド環にジメチルアミノ基を含む側鎖の結合した特異な構造を有し、陰イオンを輸送するという興味ある性質を示した。また、数種のpamamycin同族体・異性体を分離したところ、気菌糸誘導活性はpamamycinー607が最も強く、分子量が増加するにしたがって弱くなる傾向にあった。しかし、分子量635の2種の異性体は、一方が強い気菌糸誘導活性を示すのに対し、他方は殆ど活性を示さず、むしろ基中菌糸生育阻害活性を示した。このように、pamamycin同族体・異性体間には、構造と生物活性との間に極めて興味ある関係のあることが明らかになった。 2.その他の多数の放線菌について、気菌糸形成を誘導する活性物質について検討した。その結果、S.ambofaciensやS.venezuelaeの培養液中に、気菌糸形成の誘導物質が存在することを見いだした。まず、S.ambofaciensの気菌糸誘導物質を精製・単離し、酢酸カルシウムと同定した。そこでカルシウムイオンの気菌糸形成におよぼす効果を36菌種について調べたところ、19%の菌種の気菌糸形成がカルシウムイオンによって誘導または促進され、58%の菌種の気菌糸形成がカルシウムイオンの特異的キレート剤EGTAによって阻害されることを見いだした。S.venezuelaeの気菌糸誘導物質は予備的精製の結果、アセトンやメタノールに不溶で、活性炭に吸着されない極性の大きな水溶性物質であることが判った。さらに本物質による気菌糸誘導の結果、抗生物質生産もまた誘導されることを見いだした。
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