研究概要 |
本研究では, 接着剤の物性にもとづいて木質材料の寿命を科学的に推定することを目的とし,以下の実験をスタートさせた. 接着剤としては, 大別して, 従来から木質材料の製造に使用されている高度に架橋するタイプの樹脂,エポキシ樹脂や水性ビニルウレタン樹脂のように軽度に架橋するタイプの樹脂,さらにはEVAやポリ酢酸ビニルのように全く架橋しないタイプの線状高分子の3種類があるが,本年度はこのうち線状高分子にウエイトをおいて実験を行った. 供試サンプルとしてEVA(ウルトラセン710;比重0.981;VAc27.7wt%;MI=17.52)/CaCO_3とテルペンーフェノール共重合体(YSーポリスターS145;軟化点145℃,比重1.04;分子量1050)の組合せを選び,これを種々の割合に混合したものを接着剤とした. 先ず,一連の接着剤の動的粘弾性を測定した. その結果, タッキファイアーの濃度が増すほど接着剤のTgが上昇することが明らかになった. 次にカバ材を被着材に選び,一定の引張り速度において引張りの接着強さならびにせん断接着強さを測定した. その結果, いずれの接着強さもあるタッキファイアー濃度のところで極大を示すことがわかった. これから典型的な組成3つを選び, そのそれぞれについて温度および速度を変数として接着試験を行い,温度一速度換算則を適用してマスターカーブを求めた. その結果, 接着強さはいずれもある速度域で極大をもつ曲線で表わされ,またその極大は接着剤のTgが上昇するに従って低速側へシフトすることがわかった. 同様の基礎的データは別にPVAc,PVAc/イソシアネート,VHBなどについても得られており, 次年度測定されるクリープ破壊のデータとの対比から,接着系の力学的寿命の定量的な推定法が明らかになってくるものと考えられる.
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