研究概要 |
セルロース試料として, ワツトマンセルロースおよび精製ラミーを用い, 非水系セルロース溶媒(塩化ナトリウム/ジメチルアセトアミド系および無水トリフロロ酢酸)中において, 均一反応によってセルロース誘導体を調製し, 分取用液体クロマトグラフを用いて分別した. その結果, 例えばセルローストリプロピオネートの場合, ジクロロメタンを溶出溶媒としてShodexカラムを用い, 分別を繰返すことにより, 分子量が10万から5千の範囲で, 明確にしかも容易に, 分子量の異なる6〜8種の画分に分別することができた. またFTーNMR,C13ーNMRおよび2次元NMPを駆使することにより, セルローストリプロピオネートの全シグナルを完全に帰属することができた. 一方, 分子量の大きい画分についてX線用配向試料を調製し, X線繊維図より分子鎖のコンフォーメーション解析を行なった. その結果, セルローストリプロピオネートは左巻きの3回らせん構造を持ち, セルロースやセルローストリアセテートとは全く異なった空間配置をとることが解明された. また, 分子量の小さい画分について, セルローストリプロピオネートの単結晶の生成を試み成功した. 単結晶の電子顕微鏡観察およびその制限視野の電子回折図より, 観測されたすべての回折点はX線回折図の赤道線の回折点と一致し, 分子鎖が単結晶のラメラ面に垂直に配列していることが分った. この単結晶について得られた知見はMacromolecules誌に投稿・掲載(裏面の雑誌論文参照)された. さらにX線回折と電子線回折の結果を併せて, セルローストリプロピオネートの分子構造ならびに結晶構造解析について, 本年5月末, アメリカ合衆国NY州シラキュース市で開催される第10回セルロース会議で発表し, その論文はJohn Wiley&Sons社からApplied Polymer Symposiaとして発刊される予定である.
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