海水、海底泥、海藻、陸上土壌など海水環境および陸上から採集した細菌分離用試料を、0.2%のフコイダンを唯一の炭素源とする人工培地と海底泥抽出液との混合培地に混入し、25℃で1〜2週間培養した。培養液の0.2mlを試験管に取り、酸性アルブミン溶液2.0mlを注加して、白濁が生じるかどうかを観察した。白濁を生じないものをフコイダン分解細菌の培養液であると判定した。この方法によって32株のフコイダン分解細菌を自然界から分離できた。これらの分離細菌はすべて海水環境由来のものであった。分離細菌中、とくにフコイダン分離能が勝れていると判断された菌株FUー629を選び、以後の実験に供した。 菌株FUー629を前記培地中、25℃、1週間培養後、遠心して菌体を集め、1%の食塩水に懸濁した。超音波処理によって菌体を破壊し、遠心して菌体破片を除去した上層液を酵素液として使用した。フコイダン分解酵素の至適pHは6.0、長時間の反応でフコイダンの約30%を分解した。 最後に、褐藻葉体からのプロトプラストの作出について研究した。アラメ、ウミウチワ、カヤモノリ、ワカメ、ワタモを供試した。細断した葉体を2%パパイン溶液に浸漬後、本研究で開発した細菌起源の多糖分解酵素液とサザエ中腸腺抽出液との混合酵素によって22℃、60〜120分間処理すると、プロトプラストの分離が観察された。海藻の種類によってプロトプラスト分離に難易があり、カヤモノリ、ワカメ、ワタモからは、短時間の酵素処理で用意にプロトプラストが分離したが、残り2つの海藻からの分離にはより長時間の酵素処理が必要であった。分離したプロトプラストの一部は栄養補強海水中で培養すると、細胞壁を再生し、分裂を開始した。
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