研究概要 |
放射線治療あるいは放射線被曝環境下における防護剤を開発するために、生体構成物質であるDNAあるいは核酸塩基の放射線化学反応系における防護剤の性能と培養細胞系における活性の相関を調べ、下記の成果を得た。 1.各種防護剤を添加したチミン水溶液に^<60>Co-gamma線を照射し、放射線ヒドロキシル化反応生成物であるチミングリコ-ルの生成G値を求め、防護剤の放射線化学的活性を比較検討した。 2.チミン水溶液の放射線分解およびチミングリコ-ル生成に及ぼすアルコ-ル類およびチオ-ル類添加の影響を調べ、放射線化学初期活性種の反応性ならびに防護反応機構を考察した。 3.各種リポアミド誘導体を合成し、放射線化学的評価系における防護活性について検討した。 4.EMT6培養細胞の放射線不活性化に対する各種防護剤の防護活性は、放射線化学系におけるチミングリコ-ル生成に対する抑制活性が大きいものほど大きいという一義的な関係にあることを明らかにした。 5.上記の一義的関係から、放射線化学反応論に基づく放射線防護剤のスクリ-ニングが可能であることが示された。 6.チオアミド基を側鎖にもつN_1-置換-1,2,4-トリアゾ-ルをマウスに静脈注射し、薬物動態を調べた結果、この薬剤は血中で代謝され難く、長時間に亘って一定濃度に保持されるという特性を示すことを明らかにした。 以上のように、放射線化学系ならびに培養細胞系を用いた放射線防護剤のスクリ-ニング法を確立した。将来の課題として、実験動物を用いた<in(1)ー> vivo防護活性を評価することが必要である。
|