研究概要 |
酸に不安定な構造を有する配糖体, 多糖体の構造決定, 活性本体の解明を目的として糖及びアグリコンに構造変化を与えない糖鎖結合開裂法を検討した. 今回はsaikosaponin,ginsenosideに着目して検討を加えた. saikosaponinは酸に不安定なエーテル環構造を有するため, 通常の酸による部分加水分解法ではアグリコンのエーテル環が開裂することにより共役二重結合を有する化合物が誘導される. そこで, エーテル環の開裂を防ぎながら, 糖の部分的切断反応を行うためにアルコール性アルカリ溶液での分解反応を行った. saikosaponinをスペクトル用ブタノールに溶解し金属ナトリウムを加え60℃〜80℃で4〜8時間反応を行うと, saikosaponin a,c,dから, それぞれの末端グルコースの切断されたprosaikogenin F,G,E_1,E_2,E_3が高収率で単離された. なお, 反応時間の延長あるいは反応温度を上げることにより, 真性アグリコンであるsaikosaponin F,G,Eを高収率で得ることができた. さらに20(S)ーginsenosideーRg_2を同様にアルカリ処理することにより, 真性アグリコンである20(S)ーprotoparaxatnolと糖の一つ結合したprosapogeninである20(S)ーginsenosideーRh_1を得た. このような酸に不安定な化合物の化学的誘導は, これまでかなり困難な点があったが我々の開発した方法により容易に部分分解物を収率よく得られることが明らかとなった. 次にsaikosaponinのコルチコステロン分泌に及ぼす影響を検討してみると末端糖の切断されたprosaikogeninにもとのsaponinに匹適するか, より強い活性が認められ, 酸処理によって得られるそれぞれの共役二重結合を有するアグリコンからなるsaponinの活性は非常に弱いものであった. 特に, これまでsaikosaponin Cは活性がないと報告されていたにもかかわらず, prosaikogenin E,に強い効果が認められたことは注目に値するものである.
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