研究概要 |
本年度は、アルカリ分解反応におけるアルカリ金属(Na)の量について検討を行った。saikosaponin aをスペクトル用n-buOHに溶かし、saikosaponin a(sa)と等モルの金属ナトリウムを加えて反応を行ったところ、12時間までほとんど反応は進行しなかったが、17時間目では若干prosaikogenin F(PSF)、saikogenin F(SF)が確認され、等モルのアルカリ金属によって反応が進行することを明らかにした。次に、17時間後の反応液に9モル等量の金属Naを添加してみると、反応速度が急激に増大し4時間後にsaの50%が分解した。しかし、この反応において生成したPSFとSFは平衡状態を示し、PSFからSFへの変換が起きていないように思われた。そこでPSFを用いてアルカリ分解を行ってみると反応は全く進行せず、SFは検出されなかった。次に、saを完全メチル化して同様の分解反応を行ってみたが反応は全く進行しなかった。この結果は、アルカリ分解反応がglycosidic bondを直接開裂させるのではなく、糖のフリー水酸基を介した間接的な開裂反応であることを示唆した。 次に、saikosaponin c(sc)からアルカリ分解反応と酸によるエーテル環開裂反応により14種の消化管内代謝物を化学的に誘導することに成功した。 次に、sa,sdとその13種類の代謝物について赤血球溶血反応、および赤血球膜への吸着態について検討を行ったところ、溶血反応と膜へのサポニンあるいは代謝物の吸着態が比例することが判明した。用いたサポニン及び代謝物ではsd及びPSGに最も強い活性が認められ、sa,PSFの効果は、両化合物に比べると低下していた。これらの活性は前年度報告したコルチコステロン分泌活性ともある程度平行しており、これらサポニン及び代謝物の活性が、低極性を示すアグリコン部及び高極性を示す糖部の構造からくる絶妙な極性バランスに影響されていることが考えられた。
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