研究概要 |
酸に不安定な構造を有する配糖体の活性本体を解明することを目的として、アグリコンに構造変化を与えない糖鎖結合開裂法を検討した。Saikosaponin a c.d(sa,so,sd)は酸に不安定なエーテル環構造を有するため、エーテル環の開裂を防ぎながら糖の部分的切断反応を目的としてアルコール性アルカリ溶液による分解反応を試みた。結果は、sa,sc,sdよりそれぞれの部分加水分解物に相当する化合物が効率よく得られ、我々がすでに報告している胃及び腸内細菌によるSaikosaponin の代謝産物を高収率で誘導できることが明らかとなった。反応条件としては、微量の水を含んだペットル用n-BuOH_1 10モル当量以上の金属ナトリウム、反応温度は60℃〜80℃が最も良く、極性の高いMeOHあるいは極性の低いBrOHなどでは反応効率が低下した。この反応機構に関しては未だ明らかでないが、完全メチル化したサポニンでは分解反応が全く進行しないことから、直接のglycoside bond開裂反応ではなく、フリーの糖の水酸基を介した間接的な切断反応であることが確認された。またprosaikogininからsaikogeninへの分解反応は全く進行せず、糖の構造に何らかの選択性のあることも予想された。 次に、sa,sc,sd及びアルカリ分解反応で得たされらの代謝産物、合計30種類につきコルナコステロン分泌活性、赤血球溶血活性、赤血球膜への吸着能を検討したところ、赤血球溶血能と膜への吸着能が平行し、コルチコステロン分泌活性もほぼ平行する結果を得た。すなわち、sdとその腸内変化物であるprosaikegenin Gが最も強い活性を示し、次にsa,psFであった。胃内でエーテル環の切断された代謝産物の活性は非常に弱く、完全に活性の消失しているものも認められた。これらの活性はサポニンの糖部とアグリコン部の微妙な極性のバランスにより影響を受けることが予想された。
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