水熱合成法によって、最大5.5mmの炭酸基(約1wt%)を含む水酸アパタイトの単結晶を育成した。この結晶は、六方晶系に属し、格子定数はa=9.471、c=6.891Åであり、a軸が通常の水酸アパタイトよりも0.6%長かった。空間群は通常のアパタイトのP6_3/mではなく、P6^^-に対称性が低下していた。長さ0.2 の単結晶構造の精密化を行った。その構造は水酸アパタイトとほぼ同様であったが、水酸基の位置が異なっていた。水酸基はZ=1/2の鏡面のまわりに偏在し、Z=0の鏡面は空孔となっていた。炭酸基の位置は不明であったが、炭酸基が水酸基を置換する、あるいは空孔を占有するという二つのモデルが考えられた。 水酸アパタイトとアミノ酸の親和性を評価するために、炭酸基を含む水酸アパタイト単結晶上で4-ヒドロキシ-L-プロリンのエピタキシャル成長を行い、結晶学的な方位関係を調べた。炭酸水酸アパタイト単結晶をヒドロキシプロリン水溶液中につるし、ヒドロキシプロリン単結晶を炭酸水酸アパタイト単結晶上に成長させた。ヒドロキシプロリンとアパタイトの方位関係はX線回析法と偏光顕微鏡法により決定した。その結果、両者の間には2種類の方位関係が存在し、エピタキシ-が成立することが判明した。これらの方位関係に基づいて両者の結晶構造を比較すると、水素結合によって両者が接合していることが示唆された。 長さ5mmの炭酸水酸アパタイト単結晶をウィスタ-系ラット大腿骨に埋入し、骨組織反応を調べた。1週では単結晶の周囲には幼若な新生骨が認められた。2週では新生骨は成熟し、骨梁構造を呈したが、新生骨の一部は吸収されていた。4週では新生骨の量は減少し、新生骨と皮質骨の連続性が失われていた。単結晶の外形は不整形となって、溶解していた。このように、炭酸水酸アパタイト単結晶は骨形成能を持つことがわかった。
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