研究概要 |
目的:プロテアーゼを始めとする酵素の加水分解作用の洗浄系への応用は界面活性剤やビルダーの界面化学作用のみに依存していた従来の洗剤に大きな変革を与え,洗剤の無リン化に大きく貢献してきた. キレートビルダーは一般にキレート作用の大きいもの程酵素活性を阻害するという精剤配合上相反する特性をもっている. したがって, 洗浄系において酵素を有効利用し洗剤の性能を向上させるためには酵素系に適するビルダーの探索が必要である. 本研究は高分子化合物による洗剤用酵素の安定化とビルダー効果に及ぼす影響について検討し,新しいビルダーの構造を探索することを目的とする. 方法:プロテアーゼならびにリパーゼはそれぞれ起源の異る数種を用いた. 高分子ビルダーは, 非イオン性ではケン化度と重合度の異る各種ポリビニルアルコール(PVA),イオン性ではナトリウムメタクリレートとの共重合比が異る各種スチレンスルホン酸化合物(USと称す)およびUSに各種非イオン性ビニルモノマーを共重合させた高分子化合物を用いた. プロテアーゼではAnsonー萩原変法,リパーゼでは山田法による活性単位測定法に準じ,活性に及ぼすビルダーの影響を相対活性率として評価した.リパーゼによって遊離する脂肪酸量の測定にはOrion 960 Autochemistry System(本研究申請設備)による電位差滴定法を応用した. 酸化鉄およびFerric Ovinate粒子,ゼラチン,トリオレイン汚れを単一,複合汚染し, 洗浄性を検討した. 結果:プロテアーゼ,リパーゼいずれの酵素も非イオン性PVAによって活性が安定化され,イオン性USでは活性が阻害される. 非イオン性モノマーを共重合するUSでは活性に対する影響は小さい. PVAの活性保護の効果にはケン化度の影響が大きく,ケン化度が低い程高い安定化効果を示す. ゼラチンおよびトリオレイン汚れの洗浄性はそれぞれプロテアーゼおよびリパーゼ活性の安定性に大きく影響される.
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