研究概要 |
緑膿菌P.aeruginosa IID 1008のOー抗原多糖鎖の構造研究過程において,これまでに緑膿菌に見出されたことのないDーラムノースを含有するラムナン結合多糖を独自の方法により単離し,そのラムナン主鎖の構造を決定した. (Eur.J.Biochem 1987,167,203)また,この多糖は緑膿菌の菌体を抗原とするモノクロナル抗体中,比較的広範な菌株と反応する抗体E87と交差することが判明した. この種のモノクロナル抗体は多剤抵抗性を示すいわゆる日和見感染症病原菌の緑膿菌に対する免疫療法剤としての活用が期待された. しかし,その抗原決定基の特定は行われておらず,また,IID 1008株に見出されたラムナンが他の菌株に存在するか否かも不明であった. 本研究では, IID 1008株のラムナン結合リポ多糖を大量に調製し,存在が予想された結合オリゴ糖,コア部分,リピドA部分の構造研究を行ったが,当該リポ多糖は微量で,分析に必要な量の確保が出来ず,結論を得るに至っていない. 他菌株のリポ多糖画分からDーラムノースを含有する多糖を単離する際においても同様の困難がみられた. この解決法としては高い力価をもつ抗体を調整し,適当な枝持体と結合させた抗体ー抗原クロマトグラフィーの活用が必須である. 他方,GDPーMannaseからGDPーpーrhamnoseに変換する酵素活性の分布を検討したところ,8菌株に活性が検出され,その分布はE87抗体と交差する菌株と一致し,これらの菌株にDーラムナンないしはDーラムノースを含有する多糖が存在する可能性が強く示唆された.
|