研究概要 |
1)ハスとヒシの種の循環的交代機構の検討をおこなうために, 両種の光条件に対する反応の違いを検討した. ハス群落内の光環境の測定と両種の被陰ハウス内での培養実験により, 成熟したハス群落内の水面上ではヒシが生長可能な光条件に恵まれたサイトは非常に少ないことが示された. 2)ススキ群落内の陽樹の更新のためのミクロサイトの定量的評価をおこなうために, 群落内の光の利用可能性の空間的不均一性と時間変動を詳しく解析した. また, コナラをはじめとする数種の実生および稚樹をススキ群落内および被蔭ハウス内で生育させて, 実生および稚樹の生長・生残に及ぼす光条件の影響を検討した. その結果, ススキ群落内の水平面には光の利川可能性の大きな不均一性が認められ, 地表面から20ー40cmの高さの水平面には陽樹の実性の定着のためのミクロサイトがかなり存在することが示された. 3)アカマツ林をはじめとする二次林の林床および播種したシラカシの種子から生じた芽生えの定着およびその後の生長・生残とそれに及ぼす微気象の影響を検討した. 裸地では定着した芽生えの死亡率が冬期に著しく高まり, 林内に比べて著しく大きい葉温の日変化が観察された. シラカシの更新にとっては比較的穏やかな林内の冬季温度環境が重要な意味をもっていることが示唆された. 4)跡地遷移の初期相に出現する木本先駆種の発芽における裸地検出機構の実験的検討を行い. 裸地地表面の日射による高温化をシグナルとする裸地検出機構がヌルデ, アカメガシワおよびネムノキの種子に存在することを確認した. ヌルデの種子について高温刺激の休眠打破効果と致死効果を詳細に検討したところ, 野外で普通に起こりうる温度条件下では, 致死効果に比して高い休眠打破効果が期待できることが明かとなった.
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