研究概要 |
1, 設備備品として購入したウルトロクロムGT:生体物質分離システム(スウェーデン,LKB社製)一式の購入を行い,種子エライオソームに含まれる各種成分の分析に着手し,予備的データの蒐集に従事している. 2, カタクリ種子(ユリ科)のエライオソームより単離・同定された物質はリノレン酸,トリコセン,トリコサン,テトラコセン,テトラコサン,ペンタコセン,ペンタコサン,ヘキサコセン,ヘプタコセン,オレフィン,ノナコセン,ヘントリアコンテン,カンペステロール,シトステロール,パルミチン酸エチル,パルミトレエン酸エチル,ステアリン酸エチル,リノレン酸など極めて多数の天然脂肪酸並びにステロール成分が検出された. その中で最も注目すべき成分は,炭素数がC.ナD223.ニ_<,.ナ>24.ニD2,C.ナD226.ニD2,C.ナD227.ニD2,C.ナD229.ニD2,C.ナD231.ニD2の不飽和のnーアルケン(nーalkene)で従来知られている限りではこれらの不飽和アルケン類はコキブリなどの性的誘引物質フェロモンとしてよく知られているものである. 3, これに対し,ミヤマキケマンのエライオソームからはオレイン酸メチルとリノレン酸の2種類の天然脂肪酸のみが検出された. 今後,これらの成分の内,いかなる物質がアリに対する誘引効果があるかを明らかにして行く必要がある. 4, 花外蜜腺については,イタドリ・オオイタドリ(タデ科),ヤハズエンドウ(マメ科)3種について吸蜜に訪れる蟻相が明らかにされた. タデ科2種では,ムネアカオオアリ,クロオオアリ,アミメアリ,ツノアカヤマアリ,トビイロケアリなどが採集され,ヤハズエンドウではクロオオアリ,アズマオオズアカアリなどが観察された. 5, 蜜腺の形態・構造について,走査型電顕を用いた観察,写真撮影が行われると共に,組織構造についてもパラフィン・セクション法による観察が行われ,極めてユニークな腺細胞構造を有することが明らかになった.
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