1.日本産の蟻散布型植物の種子付属体であるエライオソ-ムの成分化学的な検索を行った。CHCl_3/MeOH抽出物のシリカゲルクロマトグラフィ-による分画と、各画分のGC/MS分析を行った。炭化水素はC_<22>〜C_<31>の飽和炭化水素とC_<25>、C_<27>のモノエンが主成分であった。脂肪酸は、ステロ-ルエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、遊離脂肪酸のメチルエステルよりなるが、GC/MSの分析結果は各脂質で構成脂肪酸の構成比は異っているものの、主成分はオレイン酸で、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、リノ-ル酸、リノレン酸を含むことが明らかとなった。また、従来高等植物にはごく稀にしか知られていなかったバクセン酸が検出されたことは注目に値する。ステロ-ルエステルの構成ステロ-ルはコレステロ-ル、ブラシカステロ-ル、カンペステロ-ル、スティグマトステロ-ル、beta-シトステロ-ルである。beta-シトステロ-ルは遊離ステロ-ル画分に最も多く含まれていた。水抽出物について糖、アミノ酸の分析を併せて行った。2.エライオソ-ムには糖を含む糖型(オオバナノエンレイソウ、ヒトリシズカ)と脂質型(カタクリ、フタリシズカ)があり、糖型にはとんど脂質含まれていないことが明した。この事実は、エライオソ-ムの蟻誘引成分は極めて多様たバイオアッセイの結果、脂質の各画分並びに炭化水素にも活性を示し、特に後者に対する反応は蟻の仲間認識に疑似的なものである可能性がある。4.イタドリ・オオイタドリの花外蜜腺については、その形態的・解剖学的構造、密の糖成分の構成などが明らかにされると同時に、蜜腺に吸蜜に訪れる蟻相と盗蜜昆虫相が明らかにされた。食害昆虫相についても若干の知見が得られた。以上の結果、蟻-植物間の相互関係の分化を明らかにする上での誘引成分、行動習性、食性などを含むな知見が多数得られた。
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