研究概要 |
タバコ培養細胞を用いて, 核の位置決定の機構について研究を行った. 1.核の位置決定におけるアクチン繊維の役割, 等方向伸長により生じた球形の細胞では, 核は細胞の中央部に位置していた. この細胞において, 微小管は細胞皮層部にのみ分布していたが, アクチン繊維は細胞皮層部のみでなく, 核周辺部にも分布しており, さらに核と細胞皮層部とを連絡している原形貭糸中にも分布していた. また, 核の位置は微小管をプロピザミドにより破壊しても変化しないのに対し, アクチン繊維をサイトカラシンにより破壊すると速やかに変化することから, 球形の細胞において核を細胞の中央に支持しているのはアクチン繊維であると推論した. また, 不等伸長により生じた細長い細胞については, 細胞に遠心力をかけ, 遠心力による核の位置変化の程度を基準に, 核を支持している機構の探索を行った. 核の位置変化は, 細胞をサイトカラシン処理した場合, 容易になったが, プロピザミド処理では容易にならず, 細長い細胞においても, 核の位置決定にはアクチン繊維が主要な役割を果していることが示された. 2.核の位置決定における細胞壁の役割, タバコ培養細胞から調製したプロトプラストでは, 核は中央的に位置しているが, 細胞壁を再生するにつれて核は細胞周辺部に移動してくる. しかし, プロトプラストをセルロース合成阻害剤であるジクロロベンゾニトリル存在下で培養し, 細胞壁再成を低下させると. 核は中央部にとどまったままで周辺部へと移動してこない. この結果は, 核の位置決定に細胞壁が大きく関与していることを示している. 3.今後の課題, 核の位置決定に直接関与しているのはアクチン繊維であるアクチン繊維と細胞壁がどのように関係しあって核の位置決定に働いているのかを明らかにして行く予定である.
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