研究概要 |
ハギ属, ハナハギ属およびヤハズソウ属はマメ科植物の系統進化上密接な関連性があると考えられている. 多くの研究者がその類縁関係を解明するために研究を行ってきた. 花粉研究のため, これらの属の花の形態を精査したところ, ハギ属とヤハズソウ属には花内蜜腺があり, ハナハギ属にはこれが存在しないことを発見した. ハギ属およびヤハズソウ属の花内蜜腺は雄蘂筒の内面基部に子房の柄を環状あるいは鞘状にとりまいており, 蜜を分泌している. この花内蜜腺は柔組織からなり. 師管のみからなる維管束組織を含んでいる. これらの維管束組織は10本ある雄蘂の維管束のおのおのから由来する. さらに, 蜜腺の表皮上には気孔状の構造がみられる. これらの特徴から, ハギ属およびヤハズソウ属の花内蜜腺では分泌細胞から分泌された蜜が気孔状の孔を通って蜜腺の外にしみだしていると考えられる. 以上の事実は, ハギ属とヤハズソウ属が上述のような花内蜜腺をもつことで共通しており, ハナハギ属とは異なっていることを明らかにしたもので, これら3属間の系統的関係を示唆している.
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