研究概要 |
マメ科植物の新たな分類学的形質として、花粉と種子の微細形態が重視されている。日本のマメ科ではこれらの形態について殆ど明らかとなっていない。本研究は花粉形質を日本産の種について厳密に調べ、正確に記載し、種間での比較研究を行った。 クララ属ツクシムレスズメ(Sophora franchetiana Dunn)は個体数が非常に少なく、九州南部と中国福建省の限られた地域だけに発見されており、系統分類学的位置が不明であった。本研究では、この種の花粉の微細形態を調べて、その分類学的有用性を検証した。ツクシムレスズメの花粉粒は外膜模様がメソコルピウムでは微小穿孔紋から穿孔紋であり、溝周辺では穿孔紋または皺状紋または疣状紋であることが特徴的であった。この事実から、本種の系統的位置が明らかになり、マメ科植物花粉の微細形態形質は日本産の種類でも有用であることが推定できた(Hoshi & Ohashi,1989)。 次いで、ソラマメ属、イヌエンジュ属およびハギ属の花粉の微細形態を統一的に記載して比較した。ソラマメ属およびイヌエンジュ属では全種類についての記載を完成した(Ohasi,1990 a,b)。ハギ属は分類学的な研究が不完全で、ハギ属の定義を再検討する必要があり、分類学的に密接な関連があるとされているハギ属、ハナハギ属およびヤハズソウ属の花部形態を比較検討した。ハギ属とヤハズソウ属は花内蜜腺をもつことを発見し、この点で共通しており、ハナハギ属とは異なっていた(Nemoto & Ohasi,1988)。ハギ属花粉の微細形態は日本に野生するとされる約16種のうち13種を比較研究した(Ohashi,1990 c)。
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