研究概要 |
アフリカツメガエル8細胞胚から特定の組み合せで細胞を除去しても, 得られる欠損胚は外見上正常に発生することが知られている. そのときに起こる「調整」を詳細に研究するため, 右背側細胞(動物半球と植物半球の2細胞. 以下通じ)を除去した欠損胚をつくった. これらの80%は, 期待どおり正常に発生した. 欠損胚由来の正常胚(尾芽期)のクロスセクシュンをつくり, 顕微鏡観察をした. 背側細胞クローンが形成するもののなかで, 特に眼,耳のように左右に一つずつある器官や, 胚の正中面を走る中軸器官に注意して観察を行った. その結果, 内部形態も正常であることが明らかになった. 脊索については, さらに詳しく調べた. 体積は, 対照胚と欠損胚の間で差がなかったが, 細胞数は欠損胚で約25%減少していた. 他方, 右腹側細胞欠損胚では, 全体的な内部形態はもとより, 脊索の細胞数の点でも正常であった. 「調整」の過程で各々の細胞が果す役割を知るため, 上記の右背側細胞欠損胚の右腹細胞をローダミンで染色した. この欠損胚の発生過程において, 染色された細胞を追跡した. そして, この細胞が胚の発生過程において, 染色された細胞を追跡した. そして, この細胞が胚の正中面の右側の大部分を形成していることを明らかにした. 胚が尾芽期に達したときクロスセクションをつくり, 内部形態と染色された細胞の分布を調べた. その結果, 本来な3背側細胞が形成する中軸器官を含む体の右半分を腹則細胞がつくっていることが分かった. 右背側細胞欠損胚の左背側細胞を染色して, 上記の結果と相補的な結果を得た. 以上の結果から, 「調整」の過程で腹側細胞が背側細胞に転換すること,そして失われた細胞は, 細胞数からみて必ずしも完全に補償されるのではないことなどが明らかになった.
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