研究概要 |
脊椎動物網膜の出力細胞である神経節細胞は中心野・周辺野の拮抗する受容野を持ち,スパイク別として,これら時間空間の視覚情報を中枢に送る. 従来アマクリン細胞は,神経節細胞に抑制性に働き,受容野周辺部の形成機構を調節すると考えられてきた(Werblin,1977). これに対し,Sakuranaga et al(1987),Sakai and Naka(1987)は,光白色雑音を用いたウィナー解析からアマクリン細胞は非線形成分の発生源であり,この非線形線分は,神経節細胞に線形・極性保持で伝達されていると結論した. このアマクリン細胞から神経節細胞への信号伝達関数を直接的に計測するため我々は次のような実験を行なった. ナマズ眼盃標本を用い,細胞内誘導用電極と細胞外スパイク発火記録用電極を用い,2個の隣接する網膜細胞から光刺激に対する応答の同時記録を撮り,細胞タイプを同定後,細胞内記録電極に電流を注入し,神経節細胞のスパイク列への影響を記録した. 注入電流はサイン波及び白色雑音電流であり,サイン波電流に対してはスパイク応答のPSTヒストグラムを,白色雑音電流はスパイク列との相関をとり,一次ウィナー核, 2次ウィナー核をもとめ,またウィナー核のフーリエ変換により,周波数特性を検出した. この結果以下のことが判明した. (1)光刺激に対し同型の応答を誘発するアマクリン細胞と神経節細胞(ON型,OFF型,及びONーOFF型)間の信号伝達は,20Hz周辺でCutOFFするconstant gain,Lowpass filterに置きかえられる. 信号は非反転型であり,伝達速度は速い. (2)異型のアマクリン細胞と神経節細胞内にも信号伝達が相互に行なわれており,この伝達関数は30〜40Hzがピークとなるbandpass filterである. ON型神経節細胞への信号は反転型であった. (1)(2)いずれの場合もアマクリン細胞の信号は, 線形に伝達されていた.
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