研究概要 |
ラットとマウスを実験動物として用い,生殖機能と密接と関連した内分泌機能の中枢支配と末梢器官における変化を,in vivoとin vitroの系を組み合せて研究した. 昭和62年度には以下の結果を得た. 1.ゴナドトロピン放出ホルモン産生細胞の視床下部における量的変化を出生後のエイジを追って雌雄ラットで調べ,明瞭な性差のあることを確めた. また,成体雌ラットの発情周期の継続に視交叉上核が如何に関与しているかを調べた. 外科的に部分的神経回路の切断を行い,他の神経領域との関連,特に視索前野と密接な関連の存在することをゴナドトロピン分泌の測定データに基いて確めた. 視床下部の左右性についても研究した. 2.下垂体前葉から分泌される成長ホルモンの経時的変化については,血中成長ホルモン・ソマトメジンのラジオイムノアッセイおよび成長ホルモン産生細胞の免疫組織化学により定量的な結果を得た. エイジングの進んだラットの肝臓の成長ホルモン受容体については,低親和性受容体の増加を認めた. 現在,成長ホルモンの遺伝子発現の経時的変化を検討中である. 3.ゴナドトロピン受容体数には一定の経時的変化があり,ゴナドトロピンの血中濃度がこれに影響していることはすでに報告した. その機構を解明するために,ダウンレギュレーションの主要要因と考えられるインターナリゼーションを生化学的に解析し,数理モデルを作成した. モデルによるシミュレーションは実験結果とよく一致した. また,ゴナドトロピン受容体生成過程に見られる細胞間相互作用を培養系で調べ,未確認ながら,この相互作用が化学物質によることを明らかにした. 4.ホルモン受容体の経時的変化の研究を進展させるため,受容体の可溶化の試み,受容体に対するモノクローナル抗体の作成に努力中である.
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