本年度は、最初に62年度に計測した一部のデータについての統計処理を行った。それによって地域的に不備と考えられる資料を抽出し、新たに計測した。この過程で、人骨では福島県の三貫地貝塚人のデータがさらに加えられ、歯では長野県の北村遺跡人のデータが加えられた。 人骨の面では、初年度に購入したプローブを用いて下顎骨の三次元的計測を行った。データの採取は三次元座標測定機を用いた。そのデータの解析には新たに立体局面内の輪郭を平面に展開するプログラムを開発した。これにより、角前切痕等の非計量的形質の集団間の比較を容易にすることができた。 歯については、新たに加えた北村遺跡人と昨年度に得られていた他の東日本縄文時代人との比較を中心に調査した。比較はペンローズの形態距離を用いた。その結果、北村遺跡人を含む東日本縄文人では、西日本縄文人よりも一般に大きな歯を持ち、その傾向は臼歯部で特に著しいことがわかった。また、非計量的な咬耗のパターンを山間部の縄文人と海岸部の縄文人を比較したところ、かなりのちがいがあることが判明した。このちがいは、赤沢・他(1988)が指摘している食性のちがいによるものと考えている。
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