本研究は、主要穀物であるイネ、コムギ、オオムギ等を材料として、その形質転換系の確立と有用形質(光合成関連酵素、種子タンパク質)遺伝子の導入を目的として計画されたものである。特に、イネ科植物の光合成能力の拡大、異種タンパク質の遺伝子を用いた質的形質の向上を目指した研究を行った。そのため有用遺伝子のクローン化と植物細胞への導入を行った。その為PEG法あるいはエレクトロポーレーションにより外来DNAを植物に導入し、形質転換体を得た。さらに、イネ科植物の再分化系の確立をした。特に、再分化に至る種々の条件を検討し、プロトプラストの単離条件、培養条件を解析した。DNAの導入条件としては、これまで、PEG法を用いてきたが、エレクトロポーレーションの装置を改良し、形質転換効率を高めることができた。 本研究が特筆される事は、世界ではじめてトランスジェニックイネの作成に成功した事である(Bio Technology 1988)。この事により、外来DNAをイネに導入する系が確立された。しかも、導入された遺伝子は安定に子孫に伝達される事も示された。 今後の研究課題は、さらに有用な外来遺伝子の導入である。その為、トランスジェニック植物の作成法をさらに改良する必要がある。また、双子葉植物の有用遺伝子をイネ類に導入し、その発現制御機構を詳しく解析する必要がある。
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