昨年に引き続き、胚発生に関する28の突然変異系統の解析を行った。特に、1遺伝子座での突然変異でありながら多様な表現型を示すものが予想外に多かったので、それらについて詳しく調べた。その結果、各系統の示す表現型は3〜4種類に限られること、またその表現型の多くは他の安定な突然変異系統の表現型とよく似ていることが明らかとなった。このことは、多様な表現型を示す系統(遺伝子)は、胚発生に関与する複数の遺伝子の発現を調節する遺伝子である可能性を示唆している。また球状胚段階で発育停止する系統について完熟種子の浸種後のリンゴ酸脱水素酵素活性について調べた。調査した8系統全てで浸種後5日目で酵素活性が見られ、中には浸種後10日目でも活性を示すものもあった。ただしこの間胚の生長はみとめられなかった。昨年の結果を合わせて考えると、球状胚で発育停止する系統は致死ではなく、発生経路そのものが変更され、器官分化をしないまま生存し続けるものと考えられる。 胚培養に関しては、培養条件の検討を引き続き行った。球状胚の培養には高浸透圧が有効であった。また摘出後1週間カイネチン(0か1ppm)2.4-D(0.1か1ppm)を含む液体培地で培養後、ホルモンフリ-の固形培地で培養すると胚長訳100μmの胚を出芽まで培養できた。 また今年度新たに、胚発生の開始そのものの制御機構を明らかにする目的で、ニラを材料にアポミクシスの検討を行った。ニラでは非減数性の胚のう(卵細胞)が形成され、その卵細胞の単為発生には受粉の刺激が必要ないこと、卵の単為発生率は約90%と高い頻度で起こることが明らかになった。また非減数性胚のう形成と単為発生の結果であるアポミクシン率をアイソザイムを利用して推定したところ90%以上の高い値を示した。
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