初めに、2細粒系統IM25およびIM294と原品種銀坊主について、幼苗の根端分裂組織における体細胞分裂指数(MI)および根長を催芽54時間後以降120時間まで6時間ごとに調査し、経時的変化を比較した。MIは、原品種では催芽54時間後ないしその直前にピークを示し、以後減少を続けた。これに対して両細粒系統では、催芽54時間後には原品種より低かったが、63時間後頃には原品種を越えてピークに達し、以後原品種より高い値を保ったまま原品種とほぼ平行的に減少した。一方根長は、細粒系統では上記MIの増減とは無関係に常に原品種より1mm程度短かった。以上のことから、細粒系統は細粒の分裂周期が原品種よりも長いと推察される。なおMIを調査した個体について細粒から正常粒への復帰突然変異頻度とMIとの関係を調査したが、両者間に特定の関係は認められなかった。 次に、IM294、銀坊主および両者の正逆交雑F_1について花粉母細胞(PMC)における減数分裂時の染色体行動を観察した。その結果、IM294およびF_1では、移動期(D期)から第1分裂中期(MI期)にかけて、銀坊主では全く認められない11II+2Iの細胞が高頻度(7.2%および3.9%)で認められた。D期およびMI期では染色体の同定が困難であり、不対合の染色体が特定の染色体であるかどうかは不明である。しかし一般に減数分裂期の対合を阻害する突然変異が誘発されている場合には、より多くの1価染色体あるいは多価染色体が出現するのが普通であるので、細粒系統には特定の染色体の対合異常を起こす突然変異が生じている可能性が高いと考えられる。したがって今後はその染色体と細粒遺伝子の座乗する染色体との関係を明らかにし、さらに各々の染色体を同定し、それら染色体の行動とmutatorの活性化をもたらす細粒遺伝子の復帰突然変異との関係を解明してゆく必要がある。
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