研究概要 |
本研究では、イネの染色体地図の作成をめざして、分染法などによる腕単位での染色体の識別法の確立、染色体欠失や相互転座などの染色体構造変異系統の作出、それらを用いての主要標識遺伝子の各染色体上の部位特定を試みた。分染法については、クロモマイシンによる螢光接触法を用いて、仁付随染色体の同定を行った。また花粉母細胞に酵素解離法を適用することによって、生の材料ではなくて固定貯蔵材料でもよく拡ったパキテン期染色体を標本化可能になった。標識遺伝子部位が介在する染色体欠失個体を作出する目的で、標識遺伝子系統を種子親として、それに授粉前日にガンマ-線(5KR)を照射した正常個体の花粉を授粉して、そのF_1からこれまでに2n=23+1断片染色体を19個体、2n=23のモノソミックスを29個体、可視的な染色体欠失はないが標識遺伝子について偽優性を示す個体多数を得ることができた。モノソミックスや2n=23+1断片染色体個体を正常花粉で交配したF_1は、すべて2n=24の正常個体であり、染色体欠失の次代への伝達はみられなかった。モノテロトリソミックスの作出を目的に、開花前日にガンマ-線照射したトリソミックスの自殖や、あるいは標識遺伝子をもつトリソミックスをガンマ-線照射花粉で授粉することによって、これまでに3個体の2n=24+1断片染色体を得ており、見通しを得た。開花前日のガンマ-線照射は相互転座の作出・検出に極めて有効であり新たに100以上の相互転座系統を得た。転座点と標識遺伝子の関係が明かな相互転座を用いて、相互転座へテロ固定や相互転座系統間の交配F_1の体細胞核型分析あるいはパキテン分析を行って、染色体1,3,11について、連鎖地図と染色体の対応ができた。トリソミックスに相互転座を交配して得た転座ヘテロトリソミックスに正常個体を交配してこれまでに8型のタ-シャリ-トリソミックスを得た。
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