研究概要 |
本研究は,プロトプラストから速やかに不定茅形成に至る培養系を確立し,光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察を通して不定茅分化に至る細胞分化,組織分化の様相を明らかにして,不定茅分化に係わる要因を解析することを目的にしている. 昭和62年度に得られた知見は以下のようである. 1.すでに確立している約1か月で不定茅分化に至るタバコのプロトプラスト培養系に加えて,キャベツの培養系を確立した. 又,不定茅形成について再現性の点で問題が残されていたペチュニアのプロトプラスト培養系をほぼ確立することができた. これら培養系の確立によって,次年度以降の電顕観察の基盤を作ることができた. 一方,ブロッコリについて,プロトプラスト培養開始後約3週間で不定根形成に至る培養系を確立することができた. この培養系は不定茅分化に至る細胞・組織分化を検討する際の比較の培養系として有効に利用できるものである. 2.タバコおよびペチュニアの培養系について組織学的観察を行なった結果,不定茅分化が組織学的に観察されるに先立って,小カルス内部に假導管や筋細胞を含む組織に分化が観察された. しかし,後述する不定根の分化に比べ,組織分化の領域は広いが,假導管の連絡による導管構造の発達など構造形成の程度は低いことが観察された. 一方,ブロッコリの培養系においては,小カルスの中心部に多数の假導管の分化がみられると共に,急速に導管構造が発達した後に,構造部の近くで不定根分化が始まった. 不定茅分化と不定根分化とは,組織分化の様相に相違のあることが明らかになった. この点について,次年度以降もさらに詳細な観察を続けると共に,培地組成との関連について検討する予定である. 3.電顕観察については,次年度以降に持ちこされた.
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