本研究は、プロトプラストから速やかに不定芽形成に至る培養系を確立し、光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察を通して不定芽分化に至る細胞分化、組織分化の様相を明らかにして不定芽分化に係わる要因を解析することを目的にしている。昭和63年度に得られた主要な知見は以下のとおりである。 1.キャベツ、ブロッコリ、ペチュニアの培養系については、器官分化に先立つ組織分化ならびに表面構造の変化に関する観察が進み、不定芽分化が小カルスの表面で起こるのに対し、不定根分化は小カルス内部の導管様構造の近くで始まることを共通して把握することができた。又、不定芽分化と不定根分化の間には、培養条件、とくに生長調節物質の種類と量に関係して組織分化の様相に若干の差異が認められた。すなわち、不定芽分化においては、カルス内部に生じる假導管、導管様構造などが不定根分化に比して、より少ない傾向が認められた。このような差異は、不定芽分化と不定根分化の相違がそれに先立つ組織分化の段階にまでさかのぼることを示唆するものである。 2.電子顕微鏡観察によって、不定芽分化に至る培養系では、小カルス内部に假導管、導管様構造が分化するよ先立って、小カルス中心部の細胞にP-タンパク質の存在、さらには篩細胞の分化が観察された。これに反し、不定根分化においては、小カルス内部における假尊管分化に先立つ篩細胞の分化を認めることができなかった。すなわち、導管様構造のみが発達した後に不定根分化が起こった。このような細胞分化に関する不定芽分化と不定根分化の間の相違が、果たして普偏化しうるものかどうかを現在は断言できない。次年度研究の一つの焦点として更に追究する予定である。
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