62・63年度の両年とも、生体重約200gの食用カンナ根茎を株間0.5、畝間1mとして4月下旬に圃場に定植し、11月中旬の降霜期まで栽培を行なった。肥料は窒素、リン酸、カリを各々6Kg/10a基肥で与えた。なお初期生育促進のため、7月までポリフィルムによるマルチを行なった。栽培期間中8回にわたってサンプリングを行ない、草高、茎数、主茎葉数、根茎数、葉面積等の計測後、植物体を葉、茎、根茎、根、枯葉に区分して80℃にて通風乾燥を行ない、各々の乾物重を求めた。各試料は粉砕して炭素と窒素の定量分析に供した。サンプリングの前日午後、又は当日の午前中に、個体群各層における照度を測定し、吸光係数算出の基礎とした。さらに、立毛状態の植物の葉における光合成・蒸散を測定した。茎葉の一部は緬羊に与え、飼料価値の検討を行なった。結果の概要は以下の通りである。1)5月上旬には出芽するが、旺盛な生育は7月下旬〜9月上旬に見られた。個体の乾物蓄積は11月まで続き(2112g)、葉面積指数も13.5に達した。バイオマス生産力は42t/ha、根茎収量は17t/ha(乾物重)と高く、これは草高2.7mにもなる大型作物にしては群落内の光分布が良好なことによることが分った。2)炭素含有率は茎葉ともに層別による大きな差異はないが、窒素は上層ほど高かった。個体当り窒素蓄積量は11〜15gであり、土壌窒素との比較から、窒素吸収量は約270Kg/haであると推定した。3)光合成・蒸散速度は開葉後3日目で最大に達する(20mgCO_2/dm^2/h;2.2gH_2O/dm^2/h)が、弱光下でもこれらの能力を失なわず、幅広い光環境に適応可能なことが知られた。4)体重約45Kgの緬羊に、食塩と水を除き一切の食餌を食用カンナ茎葉のみで与えたところ、1日5.5Kgの摂取で体重が維持され、健康であった。以上のことから、本作物が熱帯地域で栽培された場合、キャッサバを上廻る有用性のあることが示唆された。
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