研究概要 |
都市内樹林地の保全について考える場合, まず都市規模(面積, 人口など)を働のように考えるかが問題になった. 行政区域と都市計画区域の関係, 都市計画区域内の市街化線引き(市街化区域と市街化調整区域)と樹林の関係などである. 都市内樹林のうち, 特に景観的にも重要な役割を果す斜面樹林については, 地形条件と強く結びついていることから, 事例調査都市として斜面地形を有する丘陵型・低山地型に注目した. 可能な限り条件を限定し, 概ね全域都市計画区域の市で人口10万人代の都市・丘陵地形により斜面樹林が多少とも変動している地域を把えることとした. 事例地域として仙台市とその周辺, 横浜西南区部, 湘南地区, 岡崎市, 豊田市, 福岡市地区, 大阪東部を選び, それぞれ1/10,000地形図, 同空中写真, 市町統計書, 諸計画等の資料を参照し分析した. 対象地域全てについては目下分析継続中であり, 具体的な結論は見い出し得ないが, 最初に実態調査を始めた横浜地区(南区, 上大岡周辺)では, 既存樹林地の殆んどが斜面樹林から成り, 傾斜角も15〜30度ときつく, 他の土地利用に変り難いことから最後まで開発から免がれている. 土地所有は都市内土地騰貴に関係し, 80%以上が抵当権設定されているなど, 新しい側面が明らかになり, 単なる緑の構造等のみからの追求では充分な保全と計り難いことが明らかになった. したがって土地所有者は地区内に居住しても, 本当の意味から地区の重要な緑として確保されてはおらず, 居住者の緑意識の点から裏づけて当該緑(樹林地)の保全確保を計る必要性が高い. また他の地区の樹林地では, 主として市街化調整区域の樹林地が, 公共施設建設・開発の名の下に減少する傾向が見らり, さらに63年度にわたり, 同地区内の樹林地動向と減少要因の詳細な分析を行わねばならないことが明らかになった.
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