研究概要 |
本研究は植物病菌の病原性を遺伝子および分子レベルで解析し,病害防除の基礎を確立することを目的として行った. まず,ウリ類炭疽病菌の付着器侵入において,付着器のメラニン化が病原性獲得に必須であることは我々の研究ですでに明らかになっている. そこでメラニン合成の制御機構を明らかにするため,メラニン合成酵素の一つであるScytalone dehydrataseの〓化を行った. その際,同じメラニン合成系をもち,さらに合成活性が高いと思われるイネごま葉枯病菌を選んだ. 本菌は菌系全体がメラニン化するため,またメラニン合成が同調的に始まることが分かったので,最も合成活性の高い時期に酵素抽出を行った. 種々のカラムクロマトによって分析し,最終的に23000ダルトンのポリペプチドであることが分かった. そしてこの酵素の抗体を作製することに成功した. 現在菌体からのmRNAの抽出法が確立されたので,抗体によるmRNAの同定を行っている. 一方,いくつかの色素突然変異株を作出することに成功したのでそれらの遺伝解析を行い,各メラニン合成酵素系の次損部位を決定した. つぎに,ウリ類炭疽病菌の付着器侵入において,重要な酵素としてセルラーゼが存在する. 本酵素は本菌が植物体に侵入し,感染成立のために必須の酵素であることはすでに我々の研究で明らかにされている. まず本酵素を大量に得るため,酵素誘導条件を詳しく検討した. その結果,本菌を3日間培養したのち,培地からグルコースを除き,炭素源としてアビセルだけを与えることによって,培養ろ液中にセルラーゼが大量に分泌させることに成功した. また,付着器から分泌されるセルラーゼガ温度感受性であることがすでに分かっているが, 今回抽出されたCMCを基質とするセルラーゼも温度感受性であることが分かり,本酵素の遺伝子をクローニングすることにした.
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