研究概要 |
耐塩性の植物体の細胞レベル、培養細胞においても耐塩性が認められるかまず調べた。植物体では耐塩性程度が高いイネ品種Nona Bokraのカルスは、比較的高い塩条件下においては、耐塩性程度が低いChiem Chanhのカルスに比べ、Naの吸収を抑え、Kを多く吸収した。また種々の塩生植物からカルスを誘導し、その高塩濃度に対する反応を調べた。塩生植物カルスは高塩条件下でも生育し、体内のNa含有量が高くなってもK吸収を盛んにしてイオン毒性を軽減し、また、培地のNaCl濃度に反応してベタインなどの有機溶質の蓄積がみられた。 耐塩性の高い植物体は、培養細胞においても高塩に耐性であることが認められた。培養細胞を用いた選抜が、植物の育成に利用できると考えられる。そこで複数の中生植物から誘導、選抜された耐塩性培養細胞を用いてその性質を塩生植物培養細胞と比較しながら調べた。 サトウキビ、タバコの耐塩性株の耐塩性機構は異なっていた。サトウキビ耐塩性株では高濃度NaCl条件下でも高いK,Mg含量を維持すること、一方タバコ耐塩性株は、高いNa含量と低いK,Mg,Ca含量にもかかわらず、長期間にわたって安定して増殖していることから、体内のイオンバランスがくずれても増殖できるなんらかの耐性機構が備わっていると思われる。サトウキビはプロリン、タバコはベタインを蓄積した。 塩生植物の持つ強い耐塩性を、細胞融合などによって作物に導入することができれば非常に有効である。まず種々の塩生植物カルスを用いてプロトプラストの調製を行なった。植物種により、また培養のための植物ホルモンの条件によってプロトプラスト調製のしやすさが異なった。数種の塩生植物プロトプラストと、培養法が確立しているタバコ葉肉細胞プロトプラストとの融合を試みた。
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